カツの定食屋さんの物語

 

昔からあるような、小さな定食屋さん。

久しぶりに、定食が食べたくなってランチへ。

ある南口駅から、徒歩5分くらいだが、人通りは少ない。

でも、その定食屋さんは、5人くらいランチで食べている。

(美味しいのかな・・・)

そう思って、足を運んでみた。
すると、50代くらいの夫婦でお店を営業していて、

そんなにあくせくしてなくて、そのお店の中だけ時間がゆっくりな感じ。

中に入ると、テレビが流れていて、席も窮屈ではない。

おばちゃんが笑顔で水とおしぼり。

4人席にゆったり座っていいのか案内してくれた。

「カツ定食お願いします」

700円でご飯、お味噌汁、漬物、切り干し大根のおひたし、カツは大きくて、キャベツもどっさり。

お味噌汁の中には野菜がいっぱい入っていた。

(これで700円なんて、チェーン店に行くより来て良かったかも・・・)
チェーン店だと早いが、ここのお店は、注文があって、旦那さんがゆっくりカツを揚げている。

10分くらいして出てきた。

カツは揚げたてでサックリのコロモ。お味噌汁も美味しくて大満足でした。

「ごちそうさま」

お会計や、定食の洗い物は奥様の役割のようで、

「ありがとうございました」とニコニコ笑顔の接客でした。

(こういう定食屋って、もっと残って欲しいなあ・・・また来よう!)
それから、数週間後・・・・・・
また同じ定食屋さんへ足を運んだ。

ランチの時にメニューを見たら、レモンハイ390円くらいだったのを思い出した。

(夜、軽く飲んで帰宅するのにいいし、定食が美味しかったから行こう!)

「こんにちは」

お店へ伺うと、お客さんは一人。店主の旦那さんと、軽く飲みながら、テレビを見ている。

(今日は、あの笑顔のおばさんはいないのか・・・)

「いらっしゃい!」

空いているお店へ通されて、同じカツ定食と、レモンハイを注文。

店主は、お喋りをやめて、定食を一人で作り始める。

「先にレモンハイね」

おつまみは無かったけど、定食が出来るまでに半分くらい飲む。

「はい、カツ定食ね」

この前と同じ定食が出てきて、味も悪くない。

(これで、定食とレモンハイで、1000円ちょっとなら、いいな)

ゆったりの時間が流れ、美味しく食べ終わる。

「すみません、お会計を」

「あいよ!」

お金を支払い、「ごちそうさまー」と挨拶する。

「はい!またー」

「・・・・・・」

お店の扉をガラガラガラと閉めてお店を出た。

定食を食べたせいか、汗を少しかき、蒸し暑い。

 

「はい!またー」・・・・・・。「はい!またー」・・・・・・。「はい!またー」・・・・・・。

 

定食は美味しかったから満足。また行こう・・・ん?なんか違和感。
それは、まだ2回しか行ってないので、店主とお友達でもない。

「はい!またー」の挨拶だけが、なんか頭の中に残って違和感。
いつもお決まりな安いチェーン店に行き慣れているせいか、

「ありがとうございました♪」が欲しかったのかも。(^^;)
接客業の人に、土下座をさせて謝るよう、要求するような時代。

だから、接客業の人は大変だし、日本はサービスが過剰だとの意見もあります。

チェーン店では、アルバイトの子がマニュアル通りの「ありがとうございました」ではあるものの、

やっぱり、気持ちが良かったのかも。
ランチに行ったとき、カツ定食屋さんの奥様のあの笑顔の接客。

あれが最高接客だったから、それを求めてしまったのか。

「はい!またー」・・・・・・。

他愛もない挨拶を気にするなんて、こっちが人間的に小さいのかも。

(でも、ランチは行くとしても、夜は行かないかな・・・)

 

小さな一言がどうしてそんなに気になったのか。

自分でもわからないまま、帰宅しました。

『暮らしの感想るん♪』より

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